「みぜん」は、静岡駅南口に位置する和風ダイニングである。
クライアントは静岡・浜松市内でさまざまな業態の飲食店を展開する企業。静岡市内3軒目となる店舗が、2014年6月にオープンした。
業態は違えども、クライアントが展開する全ての店で一貫しているのは、食材へのこだわり。「みぜん」でも、契約農家から毎日届く無農薬野菜や、県内の港にあがる新鮮な地魚、地酒を楽しむことができる。
メニューは、食材そのままをシンプルに調理したものから、食材に手を加えお互いを引き立たせるように組合せたものまでさまざま。
地場の食材を使い、素材の良さを引き立たせた料理を楽しめるという店のコンセプトを、空間のデザインにも展開させることを考えた。
ファサードは、木が持つ柔らかで温かみがあるという持ち味を活かし、織物のような木ルーバーをデザインした。木材は、静岡県の山林で多く産出される桧を使用している。
店が面する通りは、駅前だけあって人や車の往来が激しい。行き交う人々を招き入れるようなファサードとするため、格子面が足元に向かってねじれるようにして奥まり、店先に人が留まるスペースをつくり出した。
ねじれた格子面は、人が暖簾をくぐる際に生じるかたちにも似ている。
店内には様々な表情を持つ素材を用い、素材と素材の組み合わせによって、豊かな表情をつくり出している。
素材を素直に生かす和の空気を、ファサードと内部の空間から感じとってもらえれば幸いである。